今週の東京市場は、日経平均が前週末の63,290.11から57,329.13へ9.42%下落し、週間ベースで近年まれな下げ幅となった。半導体関連の一角はさらに大きく、SCREENホールディングスが31.99%安、村田製作所が23.66%安、アドバンテストが19.54%安と、指数の下落率を大きく上回った。一方で米国では11月3日の米中間選挙で民主党が上下両院を制し、翌4日にはダウ工業株30種が3.03%高と急伸したが、5日にはナスダック総合が5.5%安と急反落し、週間ではS&P 500が2.68%安、ナスダックが3.37%安となった。米長期金利は10年債が4.86%と週間で8bp低下し、金は1オンス4,079.5ドルへ4.63%高、WTI原油は1バレル90.34ドルへ13.23%安と、資産間の値動きの乖離が際立つ一週間だった。
Day by day
11-02 · 選挙前のAI警戒
週明けの米国株はS&P 500が0.5%安、ナスダック総合が1.1%安となる一方、ダウは0.4%高と方向感が割れた。時価総額30億ドル超の420社のうち69.5%が上昇し、中央値は+1.2%だったが、Cienaが11.3%安、マイクロン・テクノロジーが8.8%安、AMDが8.8%安と半導体・通信機器に売りが集中した。イコールウェイトのバスケットは前日終値比で+0.6%から始まり+0.1%で引け、15時45分ETに安値+0.1%をつけた。CNBCは「Treasury yields are mixed as oil prices tumble ahead of the midterms」と伝え、選挙を前にした原油安と金利の交錯を報じた。この日の半導体安が選挙結果と無関係の需給要因だったなら、この読みは外れる。
11-03 · 投票日、ハイテク反発
投票日の米国株はナスダック総合が0.8%高と反発したが、ダウは0.4%安、S&P 500は0.4%高にとどまった。30億ドル超の419社のうち上昇は36.3%で中央値は-0.7%と、指数の上昇とは裏腹に値下がり銘柄が多数を占めた。シスコが9.3%安、ボールが7.1%安、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドが6.8%安となる一方、リーガル・レックスノードが11.8%高、グラブ・ホールディングスが9.1%高、デュポンが8.6%高だった。ロイターは「Nasdaq ends higher as AI heavyweights rebound ahead of midterm results」と報じ、MarketWatchは「Nasdaq-100 tumbles into its third correction this year as AI worries mount」とAI懸念による調整入りを伝えた。指数の反発が一部大型株によるもので、市場全体の底入れではなかったと確認できれば、この見立ては補強される。
11-04 · 民主党勝利で急伸
民主党が上下両院を制したとの結果を受け、米国株は急伸した。ダウが3.0%高、S&P 500が1.6%高、ナスダック総合が1.4%高、ラッセル2000が1.6%高となり、30億ドル超の419社のうち74.7%が上昇、中央値は+3.1%と全面高となった。デュオリンゴが26.0%高、モザイクが17.4%高、トレックスが14.3%高となる一方、トリンブルが17.3%安、バーティブが12.9%安、CVSヘルスが12.5%安だった。ニューヨーク・タイムズは「Stocks Rise as Democrats Flip Control of Congress」と報じ、ブルームバーグは「AI Data Center Boom Is Set for Upheaval After US Election Rout」とデータセンター関連の変調を伝えた。分裂政府を政策停滞と読む解釈が翌日以降に反転しなければ、この日の上昇は選挙固有のものだったと整理できる。
11-05 · 半導体株の急落
前日の上昇を一気に消す展開となった。S&P 500が4.4%安、ナスダック総合が5.5%安、ダウが3.4%安、ラッセル2000が4.5%安となり、30億ドル超の419社のうち上昇は14.3%にとどまり中央値は-2.8%だった。マイクロンが17.5%安、AMDが17.3%安、ラムリサーチが16.4%安、Cienaが15.2%安と半導体・関連機器が軒並み急落した。イコールウェイトのバスケットは前日終値比-0.7%で寄り付き、15時45分ETに安値-3.6%をつけ、14時45分から15時00分の15分間で-0.4%と下げが加速した。ガーディアンは「Nasdaq sees worst day in 18 months as investors bet on AI slowdown after Democrats’ election triumph」と報じた。この下げが選挙後の政策期待の剥落ではなく、AI投資の収益性に対する独立した再評価だったなら、この整理は修正を迫られる。
11-06 · 雇用統計と反発
週末の米国株はナスダック総合が1.1%高と反発し、S&P 500が0.3%高、ラッセル2000が0.9%高となる一方、ダウは0.5%安だった。30億ドル超の416社のうち上昇は42.1%で中央値は-0.4%と、指数の反発ほどには広がらなかった。チャーター・コミュニケーションズが6.2%安、インスレットが6.2%安、デクスコムが6.0%安となる一方、ロケット・ラボが15.4%高、コヒレントが13.6%高、MKSインスツルメンツが8.7%高だった。ヤフーファイナンスは「Stock market today: Nasdaq futures rebound after brutal sell-off, Dow and S&P 500 wobble as US adds 165K jobs」と伝え、非農業部門雇用者数16万5,000人を材料にした。半導体の戻りが続かなければ、この日の反発は一時的な買い戻しにすぎなかったと判断できる。
イベントウィンドウ:中間選挙とAI再評価
| 指数 | 10-30終値 | 11-04終値(選挙翌日) | 11-06終値 | 週間騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| S&P 500 | 7,580.07 | — | 7,376.86 | -2.68% |
| ナスダック総合 | 25,437 | — | 24,579.42 | -3.37% |
| ダウ平均 | 51,770.31 | — | 51,285.73 | -0.94% |
| ラッセル2000 | 2,811.84 | — | 2,754.11 | -2.05% |
| 日経平均 | 63,290.11 | — | 57,329.13 | -9.42% |
民主党が上下両院を制し、トランプ大統領が結果を受け入れて協調姿勢を示したことが今週の起点である。市場はまず「分裂政府=政策の停滞」を好感し、11月4日にダウが3.03%高、S&P 500が1.58%高、ナスダックが1.44%高となった。ところが翌5日にはマイクロン17.5%安、AMD17.3%安、ラムリサーチ16.4%安と半導体が総崩れとなり、ナスダックは5.5%安と18カ月ぶりの下げを記録した。伝達経路は2つに分かれる。第一に、民主党が推進するエネルギー・医療政策への転換を市場が織り込み、再生可能エネルギーと医療保険関連が物色された一方、テキサス州知事選の結果を受けてデータセンター拡張の制約が意識され、関連銘柄が売られた。第二に、11月5日の原油急落と中東停戦期待の重なりでエネルギーが選挙後の最大の負け組となった。ISMサービス業は54.5(予想54.7、前回54.9)、S&Pグローバルの総合PMIは55.9(前回58.4)、ADP民間雇用は+8.6万人(予想+7万人)と、成長の勢いはやや鈍いが雇用は底堅い。分からないのは、5日の半導体急落が政策要因によるものか、AI投資の採算性に対する独立した再評価なのかという点である。
日本市場:半導体が指数を押し下げ
日経平均は週間で9.42%下落し、当社カバレッジの日本株92社では上昇が20.7%にとどまり、中央値は-6.44%だった。下落の中心は半導体製造装置・電子部品で、SCREENホールディングスが31.99%安、村田製作所が23.66%安、マルワが23.06%安、東京応化工業が20.38%安、レゾナック・ホールディングスが19.81%安、アドバンテストが19.54%安となった。米国のAI関連株急落が時差をもって波及した形で、海外投資家のリスク削減が輸出株全体に及んだ。半面、内需・ディフェンシブには買いが入り、トヨタ自動車が10.46%高、日本ペイント・ホールディングスが7.6%高、ソニーグループが6.72%高、シスメックスが5.97%高、本田技研工業が5.36%高、サントリーホールディングスが4.91%高となった。為替はドル円が158.425円と週間で0.39%の円安にとどまり、円安が輸出株の下支えになったとは言い切れない。10年国債利回りは2.82%(10月30日時点)で、週次の変化は示されていない。
米国市場:選挙相場の反転
S&P 500は7,580.07から7,376.86へ2.68%下落し、ナスダック総合は25,437から24,579.42へ3.37%下落、ダウは51,770.31から51,285.73へ0.94%下落、ラッセル2000は2,811.84から2,754.11へ2.05%下落した。週間の当社カバレッジ327社では上昇が50.5%と半数をわずかに超え、中央値は+0.07%と指数の下落率ほど悪くない。これは時価総額の大きい半導体・データセンター関連が指数を押し下げた一方、中小型の内需・素材・消費に買いが残ったことを示す。IDEXXラボラトリーズが22.65%高(時価総額435億ドル)、デュオリンゴが21.91%高(65億ドル)、モザイクが21.59%高(59億ドル)、タペストリーが14.2%高(231億ドル)、クロロックスが13.59%高(106億ドル)と、選挙後の政策期待が乗る銘柄が上位を占めた。下落側はCienaが24.11%安(455億ドル)、デル・テクノロジーズが22.57%安(2,090億ドル)、マイクロンが22.01%安(7,803億ドル)、バーティブが21.35%安(895億ドル)、AMDが19.89%安(2,236億ドル)、クリーブランド・クリフスが19.58%安(81億ドル)と、AIインフラと素材が並んだ。
欧州市場:フランスとスペインが主導
欧州は指数間の差が大きかった。DAXは25,818.21から25,820.36へ+0.01%とほぼ横ばい、FTSE 100は10,729.8から10,673.94へ0.52%安だった一方、CAC 40は7,969.42から8,139へ2.13%高、ユーロ・ストックス50は6,131.31から6,170.49へ0.64%高、IBEX 35は18,652.9から19,369.5へ3.84%高となった。当社カバレッジの欧州220社では上昇が61.4%、中央値は+1.13%で、ドイツ45社の中央値+0.62%、フランス38社の中央値+2.44%を比べるとフランスの内需・金融・高級品の強さが目立つ。個別ではルフトハンザが17.71%高(97億ドル)、ハイデルベルク・マテリアルズが15.52%高(300億ドル)、フレゼニウスが9.8%高(292億ドル)、バイエルが9.21%高(487億ドル)となる一方、アルストムが29.6%安(63億ドル)、OHBが14.64%安、BPが11.63%安(1,166億ドル)、レニショーが11.59%安、インデラが11.15%安、STマイクロエレクトロニクスが10.74%安(418億ドル)だった。フランスではBNPパリバが7.16%高、LVMHが6.24%高、エルメスが6.11%高と、金利低下と消費期待が支えた。ドイツ10年債利回りは3.47%(9月30日時点、前日比+1bp、前月比-23bp、前年比+59bp)で、週次の変化は示されていない。
勝ち負け:半導体とAIインフラに集中
アジアでは中国本土と香港が逆行高となった。上海総合は3,599.02から3,628.44へ0.82%高、深セン成分は10,833.78から11,186.88へ3.26%高、CSI 300は3,985.5から4,113.41へ3.21%高、ハンセンは23,294.42から24,522.95へ5.27%高、ハンセン中国企業指数は7,862.22から8,288.52へ5.42%高だった。当社カバレッジの中国183社では上昇が80.9%、中央値+3.91%と広範な買いが入り、陽光電源が25.55%高(261億ドル)、ロボロックが24.63%高(48億ドル)、中国南方電網科技が22.1%高、ニューウェイ・バルブが20.44%高、NAURAが16.97%高(679億ドル)、杭州巨星科技が16.13%高となった。半導体装置のNAURAが中国本土で買われたことは、米国のAI関連売りが地域固有の需給であった可能性を示唆する。一方、台湾はTAIEXが45,211.83から38,513.33へ14.82%下落し、当社カバレッジ6社の中央値は-8.55%だった。クロマATEが31.34%安(255億ドル)、YAGEOが25.5%安(357億ドル)、デルタ電子が20.97%安(1,330億ドル)、鴻海精密工業が8.55%安(1,128億ドル)と、AIサーバー・受動部品の連鎖安が指数を直撃した。韓国はKOSPIが5,730.74から4,988.98へ12.94%下落し、インドはNifty 50が23,053.1から24,536.6へ6.44%高と、アジア内でも明暗が分かれた。
クロスマーケット:原油急落と金利低下
商品は原油の下落が突出した。WTIは1バレル90.34ドルへ13.23%安、ブレントは97.76ドルへ16.9%安となり、選挙後のエネルギー政策転換と中東停戦期待が重なった。金は1オンス4,079.5ドルへ4.63%高、銀は51.97ドルへ5.84%高、プラチナは1,537ドルへ6.88%高と貴金属に資金が向かった半面、銅は1ポンド6.26ドルへ3.07%安、アルミは3,200ドルへ3.34%安、亜鉛は3,818ドルへ5.05%安と景気敏感の非鉄は軟調だった。天然ガスは3MMBtuへ3.62%高、石炭は152.3ドルへ3.54%高、ウランは91.55ドルで横ばい、トウモロコシは442.25USX/buへ1.23%安、小麦は590.5USX/buへ2.15%安、大豆は1,194.5USX/buへ2.27%安、カリは357.5ドルへ2.72%安だった。
為替はドル円が158.425円で0.39%の円安、ドルウォンが1,363.65ウォンで1.92%のウォン安、ドルレアルが5.4959レアルで2.06%のレアル安、ドル台湾ドルが32.765台湾ドルで0.61%の台湾ドル安となる一方、ドルルピーは93.895ルピーで1.32%のルピー高、ドル香港ドルは7.8396香港ドルで0.08%の香港ドル高、ドル人民元は6.6648元で0.06%の人民元安だった。米国債は10年債が4.86%と週間で8bp低下し、2年債が4.51%で5bp低下、5年債が4.64%で7bp低下、30年債が5.26%で5bp低下、3カ月物が4.19%で3bp上昇した。10年と2年のスプレッドは35bpで、中長期ゾーンの金利低下は株式のバリュエーションを下支えする方向に働いたが、それでも半導体株の下落を止められなかった点に、今週の相場の性格が表れている。英国10年債は5.16%(前日比+1bp、前月比-28bp、前年比+69bp)、中国10年債は1.59%(前日比-1bp、前月比-11bp、前年比-18bp)で、いずれも週次の変化ではない。
来週の条件
目先は3つの条件で相場の方向を測る。第一に、ナスダック総合が24,500前後を維持できるか。5日の急落で25,000を割り込み、18カ月ぶりの下げを記録した水準であり、ここを回復できなければ調整は長引く。第二に、日経平均が57,000前後で下げ止まるか。半導体装置株の下落率が指数を大きく上回っており、アドバンテストやSCREENの戻りが鍵になる。第三に、WTI原油が90ドル前後で安定するか。13.23%の急落はエネルギー株の重しを外す一方、インフレ鈍化を通じて金利低下をもたらし、10年債4.86%からの一段の低下は株式の下値を支える。レンジとしては、S&P 500が7,300から7,550、日経平均が56,500から59,000、ドル円が156円から160円を想定する。中国本土と香港の逆行高が続くかどうかも、アジア内の資金配分を左右する。
データ付録
| 項目 | 数値 | 変化 |
|---|---|---|
| S&P 500 | 7,376.86 | -2.68%(週間) |
| ナスダック総合 | 24,579.42 | -3.37%(週間) |
| ダウ平均 | 51,285.73 | -0.94%(週間) |
| ラッセル2000 | 2,754.11 | -2.05%(週間) |
| 日経平均 | 57,329.13 | -9.42%(週間) |
| TAIEX | 38,513.33 | -14.82%(週間) |
| KOSPI | 4,988.98 | -12.94%(週間) |
| ハンセン | 24,522.95 | +5.27%(週間) |
| DAX | 25,820.36 | +0.01%(週間) |
| CAC 40 | 8,139 | +2.13%(週間) |
| 米10年債利回り | 4.86% | -8bp(週間) |
| 米2年債利回り | 4.51% | -5bp(週間) |
| WTI原油 | 90.34ドル | -13.23%(週間) |
| 金 | 4,079.5ドル | +4.63%(週間) |
| ドル円 | 158.425円 | +0.39%(週間) |
| ISMサービス業 | 54.5 | 予想54.7、前回54.9 |
| ADP民間雇用 | +8.6万人 | 予想+7万人 |
本稿は調査・分析を目的としたものであり、投資助言ではありません。記載の数値は当社が確認した市場データと報道に基づきますが、その正確性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
